公園や駅前などで、ふと目にする裸婦像。
美しい芸術作品として親しまれてきた一方で、近年、その存在を巡る議論が各地で起きています。
今回は、なぜ今、裸婦像が議論の的になっているのか、その背景や歴史を調べてみました。
なぜ?裸婦像が撤去される理由
近年、公共の場に設置された裸婦像について、その適切性が問われるケースが増えています。
- 時代にそぐわないとの指摘:一部の市民や自治体から「わいせつだ」「児童ポルノを想起させる」といった声が上がり、公共の場にふさわしくないと考えられるようになりました。高松市では、小学生が「見ていて恥ずかしい」と感じたことが、撤去議論の一因になったそうです。
- 教育上の懸念:特に子どもたちへの影響を心配し、「情操教育に望ましくない」とする意見もあります。
- 海外との比較:専門家によると、海外では裸婦像は美術館など、特定の芸術的な文脈で展示されることが多く、日本の公園のように公共空間に広く設置される例は少ないようです。
裸婦像の歴史的背景と意義
公園や駅前などの公共空間に設置されている裸婦像は、日本では特に戦後に多く設置されました。これには歴史的・文化的背景があります。
- 平和の象徴:戦後、軍国主義を象徴する軍人像などが撤去され、代わりに「平和」や「文化」を表現するシンボルとして裸婦像が選ばれることがありました。
これは、戦前の軍事的な価値観から、平和や美、芸術を重視する新しい価値観への転換を象徴するものとされました。
たとえば、1950年代の新聞記事では、東京の国会議事堂前に裸婦像が設置されたことが「軍国日本から文化日本への脱皮」を示すと報じられています。 - 西洋美術の影響:裸婦像は西洋美術における伝統的な主題であり、人間の美や理想、感情を表現する普遍的な芸術形式として、日本でも美術教育や彫刻界で取り入れられました。
美大や芸大のカリキュラムでも裸婦像の制作が一般的でした。 - 地域振興や寄贈:多くの裸婦像は地元自治体やライオンズクラブなどの団体から寄贈され、地域の文化や発展を願うシンボルとして設置されました。
たとえば、高松市中央公園の裸婦像は1989年にライオンズクラブから寄贈されたものです。
「芸術の否定では?」撤去への反対意見
撤去に対しては強い反対意見も存在します。
- 芸術的価値の擁護:裸婦像は、美や人間性を象徴する芸術表現として長い歴史を持っています。そのため、撤去の動きを「思考停止」であり、「芸術の否定だ」と批判する声も少なくありません。
- 彫刻家の思い:香川県で移設が決定した裸婦像の作者である阿部誠一氏は、「地域の発展を願って制作した作品なのに」と、怒りを表明しています。
- 教育の重要性:裸婦像をただ「いやらしいもの」として遠ざけるのではなく、その芸術性や歴史的背景を子どもたちにきちんと教えることこそが重要だ、という意見もあります。
問題の背景とこれからの考え方
この問題の背景には、私たちの価値観の変化があるようです。
戦後、「平和の象徴」として建てられた裸婦像が、現代の倫理観や性的な表現に対する考え方の変化によって、改めてその意味を問われています。
東京大学の斎藤幸平准教授は、「平和だから女性の裸の像を建てる、という発想自体が安易だった」と指摘しています。
また、設置場所の「台座の低さ」が、芸術作品としての威厳よりも親しみやすさを強調してしまい、性的な解釈を招きやすくしている、という専門家の分析もあります。
解決策として、撤去するのではなく美術館などに移設することで、芸術的価値を保ちながら、公共の場での議論を避けるという代替案も提案されています。
日本の公園にある有名な銅像
日本と世界の公園にある有名な銅像をいくつかご紹介します。
【日本】
- 「乙女の像」(青森県・十和田湖畔):彫刻家・高村光太郎の代表作です。妻・智恵子をモデルにしたとされ、十和田湖の自然と美しく調和しています。
- 「平和の女神像」(三重県・四日市市民公園):四日市空襲の記憶を伝え、平和を願うシンボルとして建てられました。
- 「上野公園の西郷隆盛像」(東京都・上野公園):軍服ではなく和服姿で犬を連れている、親しみやすいデザインが特徴です。
- 「ハチ公像」(東京都・渋谷駅):東京で最も有名な待ち合わせスポットの一つで、忠犬ハチ公を記念した銅像です。1934年に初代が建立され、現在のものは1948年に再建された2代目です。
- 「モヤイ像」(東京都・渋谷駅):渋谷駅西口にある、モアイ像を模した石像です。
1980年に新島村から渋谷区に寄贈されました。
新島の特産である抗火石で作られ、渋谷のもう一つの待ち合わせスポットとしてハチ公像の代替として利用されることもあります。 - 「いけふくろう像」(東京都・池袋駅):池袋駅東口にあるフクロウの銅像です。
1999年に設置され、「いけふくろう」は「池袋」と「ふくろう」を組み合わせた愛称です。
池袋駅の北側出口近くにあり、待ち合わせの目印として地元住民に愛用されています。 - 「三越ライオン像」(東京都・銀座):銀座の三越デパート正面入口にある2体のライオン銅像です。1914年に設置され、銀座のシンボルとして知られています。
ロンドンのトラファルガー広場のライオン像をモデルに、威厳あるデザインが特徴です。
銀座の高級感ある雰囲気と調和しています。
【世界】
- 「自由の女神像」(アメリカ・ニューヨーク):フランスから贈られた、アメリカの自由と民主主義を象徴する世界的に有名な像です。
- 「人魚姫の像」(デンマーク・コペンハーゲン):アンデルセンの童話をもとにした、哀愁を帯びた表情が印象的なコペンハーゲンのシンボルです。
- 「考える人」(フランス・パリ):ロダンの代表作で、元々は「地獄の門」という作品の一部でした。力強さと内省的な雰囲気を兼ね備えています。
まとめ
公共の場における裸婦像の問題は、芸術と社会規範、そして時代の価値観の変化が交差する、非常に複雑なテーマです。
今回の騒動で、普段なにげなく目にする裸婦像に注目するきっかけになれば嬉しいです。

